2012年12月23日日曜日

Best of 2012 #5 - Holy Other "Held"


ブステップの延長として昨年「ウィッチ・ハウス」というサブ・ジャンルが生まれたわけだが、ホーリー・アザーの新作にスクリームやブリアルの面影はない。むしろ、『ヘルド』の最大のポイントは重低音とリズムが抑制されている点にある。全体を覆う霧のようなリバーブや、突如訪れるテンポのスローダウンといった手法からは、過去のスタイルを踏襲せず独自のスタイルを一から積み上げていこうという強い意志が読み取れる。オルガンとトライアングルの組み合わせが絶妙な“Tense Past”やボーカル・チョップの鋭い“Impouring”など攻撃的な前半も素晴らしいが、亡霊によるピアノバラードのような展開から淡々と最期を迎えるラスト2曲は圧巻。完全に独自の世界観を築き上げることに成功している。過去の音源の断片を組み合わせるという2000年代的なトレンドがようやく終わりつつある。その兆しを『ヘルド』から読み取ることができるだろう。

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