これだけエレクトロニカが流行する中で、この極めてアコースティックかつミニマルな作品が多くの音楽メディアの年間ベストに入ったあたりは流石だと言わざるを得ないだろう。実際、評判を抜きにしてもフィオナ・アップルによる7年振りの新作は格別だった。こっちをみろ!(Daredevil)、あなたを見て自分を切った(Valentine) ・・・一台のピアノと最低限のパーカッションに乗せて放出されるむき出しの感情は、あるときはマグマのような怒りで、あるときは奈落の底から聞こえてくるような絶望感で聴き手の心を四方八方に揺さぶる。声にひたすら圧倒されたあとは、各曲の緻密な構成に目を向けることも可能だろう。時折導入される弦楽器、ノイズ、手拍子、子供の声・・・などはウィルコの名作『Yankee Hotel
Foxtrot』に勝るとも劣らない実験性で、聴く度に新たな発見がある。デビューから早16年。アメリカ屈指のアウトサイダーによる末恐ろしいマスターピースの誕生だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿