ダントツで再生回数の多かった一枚。ツジコ・ノリコのソロ作品の多くは硝子の破片を拾い集めたような繊細なIDMであり、「空間」よりも個々人の「脳内」に向けられていた音楽だった。しかし、ソニーなどのサウンドデザイナーを務めるTymeとの共同で作り上げられた本作は、ラップトップでファイルをいじっている若者とは格が違うと言わんばかりの繊細さとダイナミックさを合わせ持ったダンス・ミュージックに仕上がった。どの曲も素晴らしいが、全体を覆うシンセが終盤から激しく動くベースと絡み合う“ハート凍らせて”はハイライトの1つ。
音に限った話ではない。「ドアを開けて/ギュッと引き締まって歩き出す」という言葉から始まるリード・トラック“あけて、あけて”が象徴するように、かつてないほどの開放感で満ちあふれているところが特徴的だ。昨年後半に制作されたという本作からは、全体的に冬っぽい雰囲気が漂っており、開放と閉塞(=Tyme.×Tujikoなのだろう)の対比がなんともロマンチック。端々から2人の純粋な愛がひしひしと伝わり、思わず「ギュッ」としたくなる名盤だ。
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