2013年10月20日日曜日

今月の本棚

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Oneohtrix Point Never - "R Plus Seven"


れまで彼の音楽の土台であったアンビエント/ドローンから大きく逸脱した問題作。それ故に評価が難しいが、斬新さという点では彼の過去作品のみならず、近年の実験音楽シーンにおいても頭ひとつ抜き出ている存在だと言えるだろう。そして何度も繰り返し聴くうちに、メロディの美しさが際立っている作品であることにも気付く。複数のインタビューを読む限り、その要因は制作手法の変化にある。これまで彼はシンセサイザーやサンプラーを使って音の実験を繰り返しながら曲を作っていたが、今作はまずピアノの前に座ってメロディとテキストを考え、パソコンでエディットするスタイルへと転換したそうだ。その結果、曲の構成は複雑に、尺はコンパクトになり、『Returnal』に代表される陶酔感は大きく後退した。

これまでの楽曲を覆っていた霧を取り払うことで、彼が持つシュールな世界観はより一層純度を増して聴き手に迫ってくる。それは時に恐怖を伴う体験だ。現代美術家のジョン・ラフマンが手がけたグロテスクな“Still Life”のミュージックビデオではこんなフレーズがこだまする——「細部に至るまではっきりと見えているが、その意味を捉えることができない」
ただ『R Plus Seven』について、言葉で表現できることは驚くほど少ない。それだけ純粋な音楽作品というわけだ。