2011年12月3日土曜日

Oneohtrix Point Never "Replica"



OPNことダニエル・ロパティンは、今もっとも注目を集めるニューヨークの実験音楽家のひとり。Ford & Lopatin という2人組のユニットで作品をリリースしたり、自身のレーベルSOFTWAREを運営したりと、その活動は多岐にわたる。

そんな彼が満を持して発表した新作『レプリカ』は、リリース後に各方面から高評価を獲得しており、彼の代表作として記憶されることは間違いなさそうだ。しかし、個人的には位置づけの難しい作品だ。

もっとも、彼のルーツである現代音楽家としての側面と、『リターナル』を支配していたドローン・アーティストとしての側面がバランス良く配合された作品であることは間違いない。アルバムのハイライト“レプリカ”では、繰り返されるピアノのフレーズに様々なノイズやYouTubeの適当な動画からサンプリングされたであろう短いループが重なり、唯一無二の緊張感を生み出している。シンセサイザー以外の楽器をほとんど使わずに曲に構成力を持たせることができるのは、現時点では彼くらいだろう。

とはいえ、そのバランスの良さが今作の最大の弱点でもある。あらゆる要素がオーケストラのようにコントロールされている『レプリカ』では、前作『リターナル』の美しいアンビエント・ドローンや、Ford & Lopatin『チャンネル・プレッシャー』の乱反射するビートの嵐は影を潜め、あくまで要素のひとつとして均質的に機能している。つまり、アンビエントに浸りたいのなら『リターナル』を、踊りたければ『チャンネル・プレッシャー』を聴いた方が効果的ということになる。『レプリカ』を通してOPNはドローンにも現代音楽にも接近できる希有な存在であることを証明したが、その組み合わせという点ではまだまだ冒険の余地がありそうだ。


0 件のコメント:

コメントを投稿