2011年12月30日金曜日

Best of 2011 #4 - Toro y Moi “Freaking Out EP”



チルウェイヴについてひとこと言わせてもらうと、それは音楽性よりも制作される環境によって定義されると考えるべきだろう。すなわち、演奏者としての経験が少なくリスナーとしては経験豊富な若者が、音楽ソフトを使ってリバーブとコンプレッサーを過剰にかけた宅録音楽だ。音楽的に見れば驚くほど素人くさい作品が多いが、それは元々AKB48が素人の集まりだったのと同じで、いつの間にか視界から消えてしまった「大衆音楽」の揺り戻しだと言えよう。だから、ウォッシュド・アウトとトロ・イ・モアというこのジャンルを代表する2人がある程度の商業的な成功を収め、大規模なライブや金のかかったプロダクションを経験することで、(AKB48のコンセプトと同じように)チルウェイヴの消滅は必然的なものになった。実際のところ、2011年の最後の3ヶ月くらいはもうほとんど「チルウェイヴ」という単語を目にすることもなくなった。
故に、トロ・イ・モアのこのミニ・アルバムは、おそらくチルウェイヴ最後の傑作だ。このジャンルを確立させた2010年の名盤『Causes of This』にミラーボールを放り込んだようなサウンドで、あなたはその目にも止まらぬスピードで入っては消えていく音の数々にただ身を任せるだけでいい。洗練されたポップスへと接近していったウォッシュド・アウトの2作目『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』とは対照的に、走馬燈のように消えていく思春期の記憶を呼び起こすことができるだろう。まぁつまり、この時代におけるロックンロール・・・というのは言い過ぎだろうか。いずれにせよ、これはチルウェイブという甘い夢に対する、あまりにもロマンティックな鎮魂歌。



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