2013年6月29日土曜日

Single of the Week







ジャイルス・ピーターソンが発掘した脅威の新人プロデューサー。
素晴らしい女性ボーカルによる"Could it Be"は正式音源さえ出ていない状況(多分)で、ファースト・アルバムが待ち遠しい。夏ですね〜



2013年5月12日日曜日

Single of the Week



生演奏へと大きく舵を切り始めたサム・シェパード。まだ実験段階だが、どんな風に化けるのか、非常に楽しみな一曲。

2013年3月16日土曜日

天才がなれなかったものーJustin Timberlake "The 20/20 Experience"


国のポップ界に彗星の如く君臨してから20年という節目を迎えたジャスティンによる7年ぶり2枚目のソロ作。前作に引き続きティンバランドをプロデューサーに迎え、典型的なポップスからアフロビートまで幅広い音楽性を取り入れたアルバムになっている。ただし、何も考えずに楽しめるようなポップスではない。そう・・・ここにはジャスティンが長いキャリアでずっと抱えてきたジレンマー「優等生」すぎる才能とその限界ーが黒い影を落としている。

NSYNC時代から彼を知っている人にとっては、ジャスティンは常に「シンガー」ではなく「ダンサー」だった。それは彼が本作に先駆けてリリースしたシングル「Suit and Tie」をグラミー賞で披露した素晴らしいパフォーマンスでも明らかで、彼はステージ上で最も輝くタイプの人間だ。つまり、マイケル・ジャクソンと同じく、ポップ界に君臨するために生まれてきた人間なのである。




そんな彼が「俳優」や「コメディアン」としての顔を持つようになったのは、初のソロ作「Future Love Sex Sounds」をリリースし、音楽活動を休止してからだ。そして、実際にそれぞれの役を完璧にこなすジャスティンを見れば見るほど彼が自身の才能をコントロールできなくなっていることが痛いほどわかるようになる。そしてこのジレンマは、「シンガー」として復帰した今回のアルバムで、表現力の欠如として姿を現すことになってしまった。

曲の完成度がここまで高いのにも関わらず、ネガティブな評価をしなければならない作品も珍しい。今作のコンセプトの中核を担っている"Suit and Tie"は近年稀に見る完璧なポップソングで、しばらくはあらゆるダンスフロアや車の中を揺らすだろう。前作とは違い生楽器を担当するバックバンドをつけたことで生まれた"Let the Groove Get In"のや"Strawberry Bubblegum"のクールなグルーヴ感も素晴らしい。それでも、ジャスティンのファルセットを効かせた恋愛やセックスについての歌は、僕のようないたって普通の人間にはとても共感できないような、人工的な匂いのするものばかりだ。

ティンバランドの野心的なプロダクションも失敗の一因だろう。7~8分という長尺の曲をたくさん作ろうというアイディアは、ピンク・フロイドやイエスにハマってた彼が提案したものらしい。しかし、ジャスティンはポップスターである。5分以上のステージでは、魔法は解けてしまうのだ。


2013年3月9日土曜日

ダンスミュージックの現在—DJ Rashad "Rollin"


年"Teklife Vol.1: Welcome to the Chi"で鮮烈なデビューを飾ったフットワークの代表格による4曲入りのEP。今回はBurialやLaurel Halo, Dean Blunt and Inga Copelandなどで知られる今もっともホットなレーベルのひとつ、「ハイパーダブ」からのリリース。結論から言うと、わずか20分足らずの恐るべき名盤だ。

フットワークとはシカゴで生まれたダンスミュージックの一種で、文字通り足をいかに素早く、テクニカルに動かせるかを競う。この「競う」というのがポイントで、ヒップホップと同じく男性的でマッチョな黒人文化だ。つまり、ダンスミュージックでありながら、クラブ・ミュージックとは一線を画す存在として広がったシーンなのである

"Rollin"の最大の特徴はR&Bやダブの要素をふんだんに取り入れることでこうした垣根を取り払い、フットワークのマッチョイズムとこれまでタブーとされてきた「情」とを両立させたことだ。冒頭の"Rollin"ではピッチを上げたボーカルのサンプリングが鳴り響き、上物のシンセがひんやりとしたムードを生み出す。これだけ聴けばウィッチ・ハウスだが、細かく切り刻まれたパーカッションとベース音を組み合わせることで、いかにもフットワークらしい、張り詰めたテンション のある楽曲に仕上がっている。

作曲のスキルにも目を見張るものがある。"Teklife Vol.1"の最大の魅力であった細かいリズム・パターンの変化が"Rollin"ではさらに巧妙になり、ハイライトである"Drums Please"では統一されたテンポの中でシンバル、スネア、ベースがめくるめく拍を変える。片手で数えるほどしか音を使い分けていないにも関わらず、圧倒的な高揚感はどんなに装飾された楽曲をも上回る。そのミニマリスト的なメンタリティーは、足の動きだけで勝負するフットワークという文化そのものだ。

シームレスに流れる楽曲たちはRashadのDJとしての力量を証明するものであり、気づけば20分が終わっている。登場からわずか2年あまり。大衆化しエッジをなくしていくばかりのクラブ・ミュージックをあざ笑うかのように、フットワークは水面下で驚くべき進化を見せている。



2013年2月10日日曜日

帰ってきた「物語の続編」 - Foals "Holy Fire"


ートワークをひと目見た瞬間、この作品が前作『TOTAL LIFE FOREVER』の続編なのではないかと感じた。馬にまたがる5人の騎士が海に向かってゆっくりと進んでいく様子を描いたこの画からは、前作では海中でもがいていた5人のメンバー(ジャケ参照)がたくましくなって地上に帰ってきた—そんなストーリーを連想することができたからだ。そして実際に、今作は彼らが新たな飛躍を遂げたことを決定付ける一枚となった。誤算だったのは、アートワーク以上に演奏がその事実を物語っていたことだ。

2008年、オックスフォードから彗星のごとく登場したフォールズのデビュー作『Antidotes』が素晴らしかったのは、ミニマリズムに敬意を払いつつ踊れるロックを鳴らすことができたからだ。最大の特徴は真空パックのように圧縮された演奏。「上手い」とはお世辞にも言えないが、勢いがありつつどこか冷静な温度感は、ダイナミズムとは無縁の不思議なものだった。

ファーストにして既に自分たちのスタイルを完成させてしまったというジレンマに陥った彼らが選んだのは、(多くのバンドのように大きく方向転換するのではなく)持ち味のミニマルな演奏をさらに研ぎ澄ますという鍛錬の道だった。3年後に発表された2作目『TOTAL・・・』には贅肉がそぎ落とされた強靱な音が鳴り響いた。多くのメディアはこうした変化を「新たなステップ」と絶賛した。

ただ、今聞き返すと、デビュー作とは比較にならないほど凝ったプロダクションが、彼らの「強靱さ」に一役買っていたことは否めない。ダーティ・プロジェクターズやフォー・テットといった当時周辺にいたアーティストからの影響を強く感じられるのもまた事実で、この時点で彼らが「脱皮を遂げた」と言うのはまだ早かったのかも知れない。

こんなことを思ってしまうのは、今作があまりにも強力な「軸」を持っているからに他ならない。“Prelude”と題された、文字通り本作への入り口となるインストを聴き終えると、シンプルな演奏から滲み出る技量にバンドの進化を感じずにはいられなかった。象徴的なのはリズム隊。デビュー作ではギターのアンサンブルについていくのが精一杯だった感のあるベースとドラムが、今作ではむしろ曲に性急を付け、全体をコントロールしている。強力な土台の上で2本のギターは一層淡々と、しかし一層自由に、浮遊している。

先行シングルとして聴いたときは今イチな印象を受けた “Inhaler” “My Number”といった曲たちも、彼らの意図が明確なこのアルバムの一部として聴くと非常に納得のいく仕上がりになっている。『TOTAL・・・』がボクサーにとっての減量のような作業だったとすれば、今回はその鍛え上げられた肉体にもう一段筋肉を増強していく、ヘビー級へのチャレンジだと言えるだろう。ハードロックやメタルを取り込みヘッドフォンにたたみかける前半では、その成果が如実に表れている。



さらに “Out of the Woods”以降の後半では、『TOTAL・・・』で獲得した繊細な音のバランス感覚にも磨きがかかっていることが伺える。 “Milk&Black Spiders”では木琴とギターの絡み合いの上にシンセが丁寧に重ねられていき、最後は弦楽器まで挿入されるという懲り具合。もはやレディオヘッドの曲と比べても遜色ない、熟練の域に達している。

最終曲“Moon”の淡いアンビエンスで幕が下りるまで約50分。『TOTAL・・・』とほぼ同じトラックタイムにも関わらず大分短く感じられるのは、このアルバムが世界観を築いている証拠だろう。キャッチーさという点では『Antidote』や『TOTAL・・・』に及ばないが、彼らの成長を見守ってきたファンにとってはこれ以上ない魅力に溢れた一枚だ。