ダンスミュージックの現在—DJ Rashad "Rollin"
昨年"Teklife Vol.1: Welcome to the Chi"で鮮烈なデビューを飾ったフットワークの代表格による4曲入りのEP。今回はBurialやLaurel Halo, Dean Blunt and Inga Copelandなどで知られる今もっともホットなレーベルのひとつ、「ハイパーダブ」からのリリース。結論から言うと、わずか20分足らずの恐るべき名盤だ。
フットワークとはシカゴで生まれたダンスミュージックの一種で、文字通り足をいかに素早く、テクニカルに動かせるかを競う。この「競う」というのがポイントで、ヒップホップと同じく男性的でマッチョな黒人文化だ。つまり、ダンスミュージックでありながら、クラブ・ミュージックとは一線を画す存在として広がったシーンなのである。
"Rollin"の最大の特徴はR&Bやダブの要素をふんだんに取り入れることでこうした垣根を取り払い、フットワークのマッチョイズムとこれまでタブーとされてきた「情」とを両立させたことだ。冒頭の"Rollin"ではピッチを上げたボーカルのサンプリングが鳴り響き、上物のシンセがひんやりとしたムードを生み出す。これだけ聴けばウィッチ・ハウスだが、細かく切り刻まれたパーカッションとベース音を組み合わせることで、いかにもフットワークらしい、張り詰めたテンション のある楽曲に仕上がっている。
作曲のスキルにも目を見張るものがある。"Teklife Vol.1"の最大の魅力であった細かいリズム・パターンの変化が"Rollin"ではさらに巧妙になり、ハイライトである"Drums Please"では統一されたテンポの中でシンバル、スネア、ベースがめくるめく拍を変える。片手で数えるほどしか音を使い分けていないにも関わらず、圧倒的な高揚感はどんなに装飾された楽曲をも上回る。そのミニマリスト的なメンタリティーは、足の動きだけで勝負するフットワークという文化そのものだ。
シームレスに流れる楽曲たちはRashadのDJとしての力量を証明するものであり、気づけば20分が終わっている。登場からわずか2年あまり。大衆化しエッジをなくしていくばかりのクラブ・ミュージックをあざ笑うかのように、フットワークは水面下で驚くべき進化を見せている。
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