ここまで化けるとは、一体誰が想像できただろうか…サンプラーとシンセサイザーを使ってひとりで制作したデビュー作「Ekstasis」を聴いた時点では正直、当時の流行だった「宅録少女」の一部として認識していたに過ぎなかった。しかし、パリの社交界を描いた1958年の映画「Gigi」を再解釈するというコンセプトをもとに作られた本作によって、一気にジョアナ・ニューサムやフィオナ・アップルと肩を並べる存在になったと言っても過言ではないだろう。チェロ、バイオリン、サックス、パーカッションという編成が織りなす前衛的なアンサンブルの上でしっとりと歌が重なり、映画の世界観を見事に築き上げている。コンセプトアルバムであるためどの曲も必聴だが、特に圧巻なのはバーバラ・ストライサンドの名曲「Hello Stranger」のアンビエント風カバー。サブベースのように揺れるホーンと折り重なるストリングスをホルターの歌が包み込み、ほんの一瞬、この世界にいることを忘れさせてくれる。
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