2012年7月6日金曜日

Song of the Week


tofubeats "水星 (Original mix) feat, オノマトペ大臣"


この曲と作曲者のtofubeatsを巡る壮大な物語は、同曲の特設サイトでイルリメが丁寧に解説している:
添付されたmp3の完成度と、自己紹介として書かれていた「神戸在住16歳の現役高校生」という若さのギャップから、このキャラクターを紹介し「本当にコイツは16歳か?」と顔の見えないネットラジオの中でプロレスをしかけました。するとさすが関西人らしく彼は、高校の学生証の写真とmp3を添付したメールを寄せ「本当に高校生です!」とノッてきたので、この流れがいかにも顔の見えないラジオの楽しさを感じさせ、次回でも「こんな学生証なんて信じられない」と話題にして引き続きラジオの中で盛り上がっていました。で、そんな「神戸在住16歳の現役高校生」というキャラクターに感化された人間もいたようです。それを聴いてtofubeatsという存在を知った、当時の彼と同世代の10代のクリエイター達でした。「こんな年齢でやっているやつがいるのか!」「おれもラップしてます!」そんな感じでtofubeatsのまわりに感性がつどった。それまでぽつん、ぽつんと不安げに存在していた新しい感性の点と点が嬉々と繋がり線となり、さらに線は繋がり続け、ひとつの輪郭を描いていきました。その輪郭のタッチは年月とともに深まり、やがて遠くの人からでも見えるようなほどの色濃さを見せていきます。 その輪郭の形を、遠目から見た人が、昔の人間が星座に例えたように、「あの形は熊のようだ」「いや、白鳥のようだ」と言い始めればそれは新しい歴史的なシーンの誕生です。
・・・こんな文脈を抜きにしても、ああ、この感じ—なんて懐かしいんだろう。何も考えず、ただひたすら目の前のことに熱中していたあの頃。あるいは、ネットを見ていたら一日が終わってしまったあの日。考えるより先に人を好きになってしまったり、なんとなく不安になったり。表面では強がっていても、誰かにこの気持ちを伝えたい—そんな願いを叶えてくれる存在が、あの頃の音楽だった。

この曲がかかるあらゆる場所で、あらゆる男女が出会い、手を握って、キスをする光景が目に浮かぶ。あるいは、ラップトップに向かうトラックメイカー達が、目を輝かせながらこの曲の素晴らしさについて語り合っている場面も。とにかく、誰かに会いたくなる曲だ。夜が明ければその感情は跡形もなく消え去り、それぞれの日常へ帰って行くだろう。だがその儚さこそが青春の魔法。どれだけ世の中が便利になろうと、夢や、恋や、バカな無駄話はなくならない。むせかえるほど過剰にかかったオートチューンとチープなシンセ音に乗せて、この曲は、毎晩のように魔法をかける。全ての若い男女に捧げる名曲。




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