2012年7月15日日曜日

生の持続の中にある小休止—『ヘルターススケルター』



「タバコの魅力は、それが生の持続の中に小休止をもたらす点にある。(中略)物事は常に変化しているけど、タバコみたいに、いつも同じで頼りになるものがある。死を欺くとでも言うべきか。それなのにタバコは人を殺す。だからそれを吸うことはさらにセクシーになる」


先日読んだダミアン・ハーストのインタビューにおいて、「あなたの作品はなぜ単体ではなく、シリーズで作られるのかという」質問に対して、彼はタバコを例に挙げながら冷静にこう語っている。彼の作品を知る読者ならば、彼のこうした考えがミニマリズムの思想に基づいたものだということを知っているだろう。同じものが並べられ、持続する。現実ではありえないこのコンセプトは、「生きる」ことを考えなければならない人々に癒しを与える、いわば究極の現実逃避である。

『ヘルタースケルター』の中心テーマもまさにこれだ。大衆の欲望の権化であるリリィ(沢尻エリカ)、あるいはその欲望を形成している大衆は、何故終わることなき美の追求に自らの命さえ捧げるのだろう。それは、同作品で語られているように、死の存在を身近に感じることが、自分が生きていることを実感できるからに他ならない。私たちが雑誌や広告でモデルを見るとき、その完璧な身体のフォルム、一瞬の隙もない笑顔は同じコインの両面を写し出している。片方は「生の持続の中にある小休止」、つまり「生」を超越した美しさ。もう片方は逆説的に、死と隣り合わせにある存在としての美しさ。その両極端が尖っていればいるほど、彼女たちはセクシーになれる。「危険だ」と言って否定することは簡単だが、その危険さこそが美しさの魅力であることを思い知らされた。

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