2012年7月15日日曜日

Lianne La Havas "Is Your Love Big Enough?"


M1"Don't Wake Me Up"が鳴った瞬間、その驚くべきボーカルのハモりに僕はジェームス・ブレイクを連想せずにはいられなかった。歌い回しはどことなくトム・ヨークに似ているし・・・控えめなアートワークとは裏腹に、R&Bの作品の導入としては実に実験的で、Corinne Bailey RaeやFeistといった女性シンガーたちとは異なる個性を持っていることを暗に示しているかのようだ。そして実際、どこか中途半端にポップで中途半端にパーソナルなコリーヌやファイストに興味を持たなかった僕のツボを見事に突いてくれた。ポスト・ダブステップのアクセントがかすかに効いたR&Bというか・・・(のちに知ったことだが、彼女はイギリスのロンドン出身で、前述したジェームス・ブレイクやレディオヘッドの大ファンに違いない)。

しかし、作品が進むにつれ、徐々に際立つようになってくるのはボーカリストとしての彼女の魅力だ。圧巻は何と言ってもM3"Lost and Found"である。ローファイなピアノ、ギターそしてドラムによる短い前奏が終わると、彼女の語りかけるようなかすれた声が部屋いっぱいに広がり、周囲の空気を一瞬にして変える。Cメロで一瞬だけメジャーコードが導入される曲の展開も秀逸で、ありがちな涙を誘う叙情的なバラードではなく、幻想的な雰囲気を持った楽曲へと仕立て上げている。飽きることなく、これから何度も聴き続けるだろう。

1989年8月23日生まれ。新人の黒人R&Bシンガーにしては決して「若い」とは言えない年齢かも知れない。ルックスもまぁ普通だし、有名なプロデューサーがバックにいるわけでも、強烈な個性を備え持っている訳ではない。しかし、ここ数年のイギリスの取っ散らかった音楽を見事に吸収しながら、その圧倒的な歌唱力を持ったまぎれもないアーティストとしての産声を上げた『Is Your Love Big Enough?』は、嬉しいサプライズとして多くの耳を虜にするだろう。



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