Bloc Party "Four"
この新作に先駆けて発売されたシングル"Octopus"を聴いたときは、ああ、このバンドも終わりだなと思ったものだ。実際、誰もが僕と同じような感情を抱いていたのではないだろうか。なにせ、2005年に鮮烈なデビュー盤『サイレント・アラーム』を携えてイギリスのインディ・バンドシーンに彗星のごとく現れたこに若き集団は、難産だった2枚目『ア・ウィークエンド・イン・ザ・シティ』で評価が分かれたことをきっかけに停滞し、2009年にはついに活動休止を発表。その後、ボーカル&ギターのケリー・オケレケがソロ作を発表するも評価は今ひとつで、活動再開発表のニュースも今ひとつ盛り上がりに欠けてしまった。つまり、4年ぶりの新作が相当な傑作でない限り、バッシングを受けるか最悪の場合スルーされるという状況が生まれたのである。その答えの片鱗であるはずのシングルは悪くもないが良くもない、つまり「普通」過ぎた。ファンの多くがため息をついたであろうこのリリースを経て、完成した作品はなんと賞賛を浴びるどころかここ数年停滞が続いていたイギリスのインディ・シーンに活気を取り戻す起爆剤になるのではないかという期待さえ抱かせる紛れもない傑作となり。全く、どこまでも憎たらしい連中だ…
勝因は2つ。ひとつ目は、今までの「ニューウェイヴ・リバイバル」というレッテルをあざ笑うかのようなバラエティに富んだ曲群だ。勿論、トレードマーク巧妙なアンサンブルによるニューウェイヴ調の曲も光っているが、それら以上に目立つのがレデイオヘッドなど影響を受けたバンドのサウンドを恥じることなく取り入れている点だ。要するに彼らは、自分たちが何者でもない、しかしそれがジャンルなき現在のバンドのあるべき姿なのだと開き直った。「イギリスと言えばダブステップ」と即答する僕のようなリスナーは、今一度UKロックの懐の深さを思い知ることになるだろう。
そして、そうしたサウンドの多様性によりとっ散らかった印象を与えかねない曲たちをつなぎとめているのが2つ目の勝因、すなわち演奏の一貫性だ。特筆すべきはベーシスト、ゴードン・モークスのアグレッシブなフレージングで、ギターリフがレディオヘッドの"Feral"そのものだと言われても仕方が無い"Team A"に独自のドライヴ感を与えている。ギターフレーズとのユニゾンも効果的だ。こういう音はDAWでは作れないよなと思わせる、プレイヤーの素顔が見える演奏だ。そう…僕の瞼の裏に映るのは、一度は決別した若者たちが再び集まって音楽を鳴らしていることを心から喜んでいる、希望に満ちた表情だ。
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