2012年4月8日日曜日
Lone “Galaxy Garden”
前作『Emerald Fantasy Tracks』のアートワークと見比べてみれば、LoneことMatt Cutlerが今作で示している音楽的方向性の変化は明らかだろう。要するに、海から宇宙へ・・・あるいは昼から夜へとその舞台を変えている。もっとも、これは最近のシーン全体に見られる傾向で、「チルウェイヴ=海」というイメージを作り上げたWashed Outは寝室へ、Toro Y Moiもダンスフロアへとそれぞれの道を歩み始めている。霧のように楽曲を覆っていたリバーブが薄れ、よりしっかりとした、シンプルな音が今のチルウェイヴの主流である。それはもはや、ノスタルジアを表現する場として、時代の最先端を走るダンス・ミュージックというフォーマットが相応しくないということなのかも知れない。
したがって、リバーブの効いた、陽気なLoneが好きだったファンにとっては、がっかりする内容になっているかも知れない。また、宇宙的=コズミックと呼ばれる音楽が持つスピード感や陶酔感という点では、依然からその方面で人気を博しているフライング・ロータスやハドソン・モホークに軍配があがることは否めないだろう。それでも、彼の卓越したメロディセンスはやはり何物にも代え難く、幾重にも重なるシンセのメロディが4つ打ちのビートと絶妙に絡み合う”Lying in the Reeds”は前作のハイライト”Aquamarine”の進化形とも言うべき、洗練されたダンス・ミュージックだ。まぁ、彼は今後もコロコロと方向性を変えて、リスナーを煙に巻くのだろう・・・だがその未熟さこそが、このシーンが持つかけがえのない魅力にもなっていることは確かだ。将来なんて、想像するだけ無駄なんだから。
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