2013年9月14日土曜日

近未来で響くブラック・ミュージック—Janelle Monae『Electric Lady』



“Tightrope”でセンセーショナルにデビューした新世代R&Bシンガーによる3年ぶりの新作。「28世紀からやってきたアンドロイド、シンディー・メイウェザー」というキャラクターを演じた前作『The ArchAndroid』のコンセプトを引き継ぎながら、よりセクシーに進化したボーカルと研ぎ澄まされたグルーヴが光る素晴らしいアルバムだ。驚くべきはその確立されたSFチックな世界観で、プリンスやエリカ・バドゥなどの豪華ゲストを加えても「未来で鳴っている音楽」という感覚が揺らぐことはない。

本作はアンドロイドの「DJクラッシュクラッシュ」が司会を務めるラジオ番組を聴いているという設定。作品の中の社会には人間とアンドロイドが暮らしているが平等ではなく、アンドロイドは人間によって抑圧されたり、嫌われたりしている。曲と曲のつなぎ目でDJクラッシュクラッシュは、人間に対する不満を露わにするアンドロイドや、アンドロイドを馬鹿にする人間の意見を紹介していく。そんな中で、アンドロイドのアイドルであり、対立ではなく平和を主張する「シンディー・メイウェザー」ことジャネル・モネイの楽曲が流れていくという感じだ。

なんの変哲もない、ありきたりな設定だと思うだろうか。本作の素晴らしさは、近未来で鳴っているBGMとして機能しながら、普遍的なブラック・ミュージックとしての強度を誇っている点にある。彼女は作品のコンセプトと、黒人の女性という自身のアイデンティティーとの関連性についていくつかのインタビューでこう語っている。「私が表現したいのは『他者』という存在。シンディー・メイウェザーは抑圧されたマイノリティーの象徴なの」

華奢で背が低く、その繊細な声も一般的なソウルシンガーのイメージとは程遠い。ジャネル・モネイのこうした特徴が、彼女の『他者』というコンプレックスに一段と拍車をかけてきたのだろう。そうした苦しみを抱えながら、『Electric Lady』では力を尽くして歌い、踊る。その圧倒的なエネルギーは、洗練された楽曲の殻を破りながら訴えかけてくる。<We are tired of the fires. Quiet no riots. We are jammin’, dancin’ and lovin’. Don’t throw no rock, don’t break no glass. Just shake your ass.

2013年9月8日日曜日

Single of the Week



最近のMark Fellは素晴らしい。
機械的な変拍子の中でかすかにうごめくGROOVE