2012年12月23日日曜日

Best of 2012 - Best Tracks


1.  Todd Terje “Inspector Norse”



2.  LITE “bond”



3.  f(x) “Hot Summer”



4.  Purity Ring “Saltkin”



5.  Lianne La Havas “Lost & Found”



6.  Ariel Pink “Only In My Dreams”



7.  frank ocean “Pyramids”



8.  John Talabot “When The Past Was Present”



9.  THA BLUE HERB “Lost in Music Business”


10. Santigold “Disparate Youth”



年のキーワードは「ダンス」だったのではないでしょうか?ということで、踊れる曲を中心にセレクト(ベストアルバムに入れたアーティストの曲は除いています)。それ以外では、全く新しいベクトルに向かい絶滅状態のポストロックを救った【2】、今年最高のR&Bバラード【5】、歳を取ってもナンバー1にこだわり続ける心意気が◎な【9】などが良かったです。

Best of 2012 #4 - Fiona Apple “The Idler Wheel Is Wiser Than the Driver of the Screw and Whipping Cords Will Serve You More Than Ropes Will Ever Do”

れだけエレクトロニカが流行する中で、この極めてアコースティックかつミニマルな作品が多くの音楽メディアの年間ベストに入ったあたりは流石だと言わざるを得ないだろう。実際、評判を抜きにしてもフィオナ・アップルによる7年振りの新作は格別だった。こっちをみろ!(Daredevil)あなたを見て自分を切った(Valentine) ・・・一台のピアノと最低限のパーカッションに乗せて放出されるむき出しの感情は、あるときはマグマのような怒りで、あるときは奈落の底から聞こえてくるような絶望感で聴き手の心を四方八方に揺さぶる。声にひたすら圧倒されたあとは、各曲の緻密な構成に目を向けることも可能だろう。時折導入される弦楽器、ノイズ、手拍子、子供の声・・・などはウィルコの名作『Yankee Hotel Foxtrot』に勝るとも劣らない実験性で、聴く度に新たな発見がある。デビューから早16年。アメリカ屈指のアウトサイダーによる末恐ろしいマスターピースの誕生だ。

Best of 2012 #5 - Holy Other "Held"


ブステップの延長として昨年「ウィッチ・ハウス」というサブ・ジャンルが生まれたわけだが、ホーリー・アザーの新作にスクリームやブリアルの面影はない。むしろ、『ヘルド』の最大のポイントは重低音とリズムが抑制されている点にある。全体を覆う霧のようなリバーブや、突如訪れるテンポのスローダウンといった手法からは、過去のスタイルを踏襲せず独自のスタイルを一から積み上げていこうという強い意志が読み取れる。オルガンとトライアングルの組み合わせが絶妙な“Tense Past”やボーカル・チョップの鋭い“Impouring”など攻撃的な前半も素晴らしいが、亡霊によるピアノバラードのような展開から淡々と最期を迎えるラスト2曲は圧巻。完全に独自の世界観を築き上げることに成功している。過去の音源の断片を組み合わせるという2000年代的なトレンドがようやく終わりつつある。その兆しを『ヘルド』から読み取ることができるだろう。

2012年12月22日土曜日

Best of 2012 #6 - Jens Lekman "I Know What Love Isn’t"


「愛が何でないかは知っている」・・・なんというひねくれたタイトル。まぁ、デビュー作品が「君の犬になりたいと言ったとき」だからサプライズはないか(苦笑)。<シナトラは上手くやっていたのだろう>(Erika America)、<バンドは嫌いだ/いつも手をつないでいるカップルでごった返している(I Know What Love Isn’t)など、自分がイメージしていた「アーティスト」と現実とのギャップを赤裸々に吐露するシュールな歌詞が素晴らしい(それで人気を得ているのだから、なおさら皮肉な話だ)。音楽的にはフラメンコからワルツまで幅広いジャンルを横断しており、完成度は本当に高い・・・が、よく聴くとチープという徹底したナイーブさ。アリエル・ピンクのあまりに完璧すぎる新作を中々聴く気になれず、歌モノを聴きたくなったときにはこの盤をかけた。

Best of 2012 #7 - Ogre You Asshole "100年後"


作『homely』が各方面から絶賛されたからてっきり多楽器路線に行くのかと思いきや、評論家とファンの期待をわざと裏切るようなかたちで淡いサイケデリアに回帰した5枚目。この若さでゆらゆら帝国の不在を完全に埋めるアルバムを出してくるとは・・・この国のロック・バンドもまだまだ捨てたもんじゃない。テーマ性が重視されているようだが、絶妙なテンポ感が白眉の先行シングル「夜の船」を始め、AORを意識させるファンキーな「すべて大丈夫」、得意のクラウト・ロックを深化させた表題曲「100年後」など個々の曲でも充分楽しめる。ゆら帝がそうであったように、人生を虚構として認めた上で、そこに芸術としての価値を与えていくという感性は日本独自のものであるように思う。オーガがそういった表現の担い手として今後も重要な役割を果たしていくことは、本作を聴く限り間違いなさそうだ。


2012年12月20日木曜日

Best of 2012 #8 - Masabumi Kikuchi “Sunrise”


年の11月に逝去したポール・モチアンが参加した最後の録音・・・というキャッチフレーズが今後もつきまとうだろうが、正直、本作における最大の魅力は菊地雅章の縦横無尽に広がる独創的なピアノにある。次々と予測不能なメロディを繰り出しては、リスナーをからかうように先へ先へと進んでいく。必死で食らいつくモチアンやベースのトーマス・モーガン。そう・・・これがインタープレイだ。即興で生まれるジャズは、何もかもがパソコンでプログラミングされる現代においては化石のような立ち位置だ。それでも、研究熱心な学者のように、音楽へのあくなき探求心は必ず成果を生むということを忘れてはならないだろう。このピアノトリオによる傑作は、僕が初めて菊地の音楽に衝撃を受けた17人編成の『Susto』(81年)と変わらぬスリルで溢れている。

2012年12月19日水曜日

Best of 2012 #9 - Shackleton "Music for the Quiet Hour / The Drawbar Organ EPs"



験音楽にとっての1年はどうだったのだろう。各誌の年間ベストにはRaime “Quarter Turns Over a Living Line”Actress “R.I.P”といった内省的な作品が名を連ねる中、個人的にはこの壮大な挑戦に勝るものはなかったと思う。約1時間ノンストップに鳴り続けるシンセサイザーとビートの嵐・・・それはまるで永遠に続くジェットコースターのように聴き手の五感や重力を奪い、宇宙空間へと連れ去っていく。誤解のないように言っておく。これはジョン・コルトレーンやフライング・ロータスが提示する精神の極点としての宇宙ではなく、映画『プロメテウス』で描かれているような、未知の恐怖で埋め尽くされる不気味な洞窟だ。しかし、最大の驚きはこれがダブステップのベテランによる作品だということだろう。彼の音楽に対する信念は、本作で幾度となく繰り替えされるはフレーズが象徴している:「音楽は未来の兵器/現実は明確だ」